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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2137号 判決

控訴人 上野宗男

右訴訟代理人弁護士 吉田恵二郎

被控訴人 高木繁夫

〈ほか二名〉

右三名訴訟代理人弁護士 山登健二

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を次のとおり変更する。被控訴人らは、各自控訴人に対し、二六万一四三〇円及び内金一九万一四三〇円に対する昭和五一年一月三〇日以降右支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を、被控訴代理人は控訴棄却の判決を各求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は、控訴代理人において甲第六号証を提出し、当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、左記乙第三、第四号証の成立をいずれも認め、被控訴代理人において乙第三、第四号証を提出し、当審における被控訴人高木繁夫本人尋問の結果を援用し、右甲第六号証の成立を認めたほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

理由

当裁判所も、控訴人の本訴請求は、原判決の認容した限度において理由があり正当として認容し、その余は理由がなく失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、原判決八枚目裏九行目に「被害車」とある前に「控訴人の父訴外上野摠一の所有で控訴人が同人より借り受け使用していた」を加え、同九枚目表から同一〇枚目表六行目までの「四過失相殺」についての説示全部を、

「《証拠省略》によれば、

本件事故現場は、大口方面から白幡西町方面に(北東から南西に)向う道路(市道)と第二京浜国道方面から菊名方面に(南東から北西に)向う道路(通称綱島街道)とがほぼ直角に交る交差点内であること、本件交差点には信号機が設置されているが、本件事故時少し前頃から故障して作動していなかったこと、市道上本件交差点の大口寄り手前、綱島街道上本件交差点の第二京浜国道寄り手前にはいずれも停止線が表示されていること、本件交差点の東側及び北側角には商店の建物があるため市道を大口方面から白幡西町方面に本件交差点を通過しようとする車両にとって左右の見通しが、また綱島街道を第二京浜国道方面から菊名方面に本件交差点を通過しようとする車両にとって右方の見通しがいずれも悪いこと、本件交差点附近の市道は幅員六・五メートルの歩車道の区別のないアスファルト舗装道路であり、綱島街道は幅員九・七メートル(車道部分約八メートル、その両側にそれぞれ約一メートルの歩道)のアスファルト舗装道路であること、両道路においては毎時四〇キロメートルに速度制限がなされていること、本件交差点附近は照明によって夜間も明るいこと、被害車は、市道を大口方面から白幡西町方面に向け、加害車は綱島街道を第二京浜国道方面から菊名方面に向けて進行し、本件交差点にさしかかった控訴人、被控訴人高木とも信号機が故障していることに気付いたこと、控訴人は、本件交差点の大口方面寄り手前の停止線附近で一時停止した(同所での左右の見通しは極めて悪い。)のち時速約一五キロメートルの速度で右前方を見ながら進行して交差点に進入した直後左前方に綱島街道を第二京浜国道方面から菊名方面に向って交差点に進入してくる加害車を発見し、直ちに右に転把し急ブレーキをかけたが及ばず、交差点中央附近で加害車の右前部と被害車の左前部とが衝突したこと、他方被控訴人高木は、本件交差点にさしかかった際の時速約三〇キロメートルの速度のままで前車に続き交差点を通過しようとしたところ、交差点進入直前に右前方に市道を大口方面から菊名方面に向って交差点に進入しようとする被害車を発見し、直ちに急ブレーキをかけたが右述のとおり被害車と衝突するに至ったこと、加害車は衝突地点から若干進行して停止し、被害車は衝突地点からほぼ北西方向約六メートルの路上に停止したこと、なお被害車、加害車とも本件事故当時前照燈を点燈していたことの諸事実が認められ(る。)《証拠判断省略》

右認定事実のもとにおいては、控訴人は、本件交差点に進入するに際しては、徐行し前方左右を注視して安全を確認して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り(被害車は、道路交通法三六条一項により第二京浜国道方面から菊名方面に進行してくる車両の進行を妨げないことが要請される。)、時速約一五キロメートルの速度で左前方を注視しないで進行した過失があり、他方被控訴人高木においても、本件交差点に進入するに際しては、徐行し前方左右を注視して安全を確認して進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、時速約三〇キロメートルの速度のまま交差点を通過しようとした過失があり、これらが競合して本件事故を生ぜしめるに至ったものというべきであって、前叙諸事情のもとにおいては、本件事故により控訴人の被った損害の額の少くとも半分を過失相殺により減ずるのが相当であり、そうすると、控訴人の人身損害は八万七一八七円、財産損害は一二万四三五〇円となる。」

と改めるほか、原判決理由説示と同一であるから、これをここに引用する。

そうすると、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、仮執行の宣言は相当でないのでその申立を却下し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林信次 裁判官 鈴木弘 河本誠之)

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